本文へ移動

野村得庵のまなざし

2023年春季特別展
開館四十周年記念名品展 野村得庵のまなざし 
 
前期:3月4日(土) ~ 4月23日(日) 
後期:4月29日(土)~6月11日(日)
※ 4月24日 (月)~28日(金)は展示替のため休館   
 
皆様のご鞭撻・ご支援のお蔭をもちまして、野村美術館は開館以来四十年の節目を迎えましたこと、厚く御礼申し上げます。
 昭和五十八年(一九八三)に開館致した当初は、美術館運営について西も東もわからないまま無我夢中で試行錯誤を繰り返しながらも、
多くの方のご協力を得て、次第に美術館としての体裁を整え、茶の湯の美術館としての存在を確立することができました。

 当館は野村證券等の金融財閥を一代で築き上げた二代目・野村徳七(号得庵)のコレクションをもとに発足いたしましたが、
その後篤志家の方からのご寄贈をいただき所蔵品も充実してきたとはいえ、
得庵が蒐集した美術品を基に成り立っていることは開館当初と変わることはありません。

 得庵は実業家として活躍するかたわら多くの趣味を楽しみ、とりわけ茶の湯と能楽に深く傾倒し、晩年にはそれらは趣味の域を超え、
事業とともに得庵の心の中では三位一体となっていたのではないかと考えられます。
その集大成ともいうべき施設が当館の北に位置する碧雲荘であり、そこには多くの茶室と能舞台等が営まれ、
国内外の貴賓を招いて能楽や茶の湯、あるいは踊りや食事等、日本文化を実感できる場所として利用されてきました。

 そのなかでも茶の湯は中心的な役割を果たし、得庵は茶の湯に関わる多くの美術品を蒐集しつつ、
江戸時代に行われていた大名茶の湯の再現を目指したようにも思われます。
そのことは、得庵が活躍した当時に多くの旧大名家の蔵が開かれ、それら大名家旧蔵の茶道具の名品を多く入手していることからも窺われます。
なかでも加賀前田家・仙台伊達家・出雲松平家等の売立で入手した旧大名家蔵の道具を骨格として、
得庵コレクションが形成されていることをその特徴の一つとして挙げることができ、
さらに得庵コレクションとは、得庵という数寄者の価値観を通して、彼自身の目ききにより選ばれた美術品群ともいえるでしょう。

 今回の展示はそうした得庵コレクションのなかから名品をよりすぐって展示し、
得庵が目指していた茶の湯がどのようなものであったかを感じ取っていただけるよう構成しています。
 茶の湯はずば抜けてすぐれた一つの名品を誇示するのではなく、茶室内に置かれたすべての茶道具が調和することを心がけるとともに、
その時々の季節と自然を強く意識しながら茶会を催します。
しかし今回は茶道具を調和させるとの観点ではなく、得庵コレクションの名品を紹介することに重点を置きましたので、
茶会の取り合わせとはいささか異なった展示となっていますが、本展の趣旨をご理解いただき、
得庵が茶道具を中心とした美術品に注いだ熱いまなざしを感じ取っていただければさいわいです。
TOPへ戻る